自然派きくち村

自然栽培、農薬・肥料不使用のお米とお野菜。
ストレスをかけない放牧された牛、豚、鶏のお肉。
こだわり抜いた調味料。
それらを使用した惣菜にスイーツ。

きくち村の小さな旅 第6回「パワーの源」

 5月になると「きくち村」のある菊池市の田園地帯・山間部はなにかとざわつき始める。 トラクターの耕うん作業や田んぼの畔を草刈りする姿を頻繁に見かけ、今年の米作りが始まったことを実感する。米作りをする人々はキリッと引き締まった顔つきになり、10月まで続く米作りの工程を逆算し、天候なども考慮しながら日々の作業を行っていく姿は近寄りがたい独特のオーラを感じる。田んぼの種まきを行い、苗が育ち、田植えをする6月末までのなんとも言えぬ緊張感を感じるこの期間が私は大好きだ。

 お米はこの時期に栽培が始まるが、この時期に収穫を迎える作物もある。今回紹介する パワーの源「にんにく」である。訪れた場所は「きくち村」から車で10分程の田園地帯にある「ひろふみ農園」。園主の渡辺博文君は新規就農5年目。主な作物は「お米」と「にんにく」でたまねぎ・かぼちゃなども試験的に栽培を行う。きくち村のスタッフは皆、博文君のことを店長と呼んでいる。昔からのきくち村ファンの方なら“ピン”とくるかも知れないが、博文君はきくち村の元スタッフで店長として約6年前まで汗を流していたからである。博文君の丁寧な接客と確かな知識で店長ご指名の電話が多かったことを思い出す。

 今回、一緒に小さな旅に出かけたのは、草野さんと室原姉さん。二人とも初めてのにんにく収穫とのことで笑顔で圃場に着くと、約一反の畑で博文君が一株、一株手作業で収穫を行っていた。「この畑でどの位の株があるとね?」と尋ねると「大体、1万株位あります」と爽やかな笑顔で答えてくれた。その瞬間二人の笑顔は驚きの表情へと変わった。今回訪れた圃場が約1反、合計で5反の圃場でにんにくの栽培を行っているため単純計算でも5万株となる。

「もしかして、全部手作業で収穫しよるとね」と思わず聞いてみた。「当たり前じゃないですか。機械でも収穫可能だけどまだまだそんな機械は買えないし、3日もあれば一人で1反位は収穫できますよ」「これも慣れですよ」と慣れた手つきで収穫を行いながら話してくれた。

 にんにくは収穫後、根と茎を1株づつ切り、乾燥し最終的には1玉1玉皮をむくというとても手間のかかる作物だと私も今回の旅で初めて知った。作業中、前から気になっていたことを聞いてみた「なんで、新規就農したとね」。今更な質問に「きくち村でこだわりを持った生産者さんや食に関心のある消費者の方と接するうちに、自分で育てた作物を自分の手で直接販売したいと思うようになったことが一番ですかね」と照れくさそうに話してくれた。

現在博文君は地元の業者に生産物を卸す他、こだわりのレストランにお米を納品したり、マルシェなどにも参加し「ひろふみ農園」ファンを着実に増やしていっている。 「きくち村」に野菜を納品する際も、何度も店頭に顔をだし、味の確認や生育状況など教えてくれる真摯な姿を現在の「きくち村」スタッフも目の当たりにしていることが今でも「店長」と呼ばれている由縁であろう。

 今回も圃場での試食を試みた。紹介する“本物のアレ”は「にんにく塩麹」。きくち村オリジナルの麹で塩麹を仕込み、ひろふみ農園のにんにくを贅沢に使用した肉、魚、野菜などなににでも使用できる万能調味料が完成した。早速、採れたての玉ねぎとズッキーニをソテーし仕上げに「にんにく塩麹」を入れ軽くソテーする。当り一面にんにくの食欲をそそる香りが漂った。博文君に試食してもらうと「旨いすね!少し火を入れると塩麹の辛味がマイルドになって旨みが増しますね」と太鼓判をもらった。あと一品は「にんにくの玄米味噌漬け」。熟成期間が必要なので試食はできなったがこちらもにんにくの風味が食欲をそそる一品に間違いないであろう。



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