自然派きくち村

自然栽培、農薬・肥料不使用のお米とお野菜。
ストレスをかけない放牧された牛、豚、鶏のお肉。
こだわり抜いた調味料。
それらを使用した惣菜にスイーツ。

きくち村の小さな旅 第2回「食卓を彩る 12月」2018年

 12月も半ば、薄暗い早朝の畑に足を踏み入れると“ザクッ”とした感触が足元に伝わり、畑の野菜達もキリッと引き締まった姿になりやっと本格的な冬がやってきた。街中では最近流行りのクリスマスマーケットも開催され、会場は竹あかりのイルミネーションの中で出来立てのローストポークやピザを食べながら間もなく訪れるクリスマスを楽しみにしている若者や子供達の笑顔で溢れ、1年の中でも特別な月12月を皆楽しんでいた。

 マーケット会場でお目当てのローストポークを購入するため長い行列に並んでいるとき、きくち村代表渡辺の言葉をふと思い出した「あなたが食べている物の生産者の顔がわかりますか?」残念ながら会場内では生産者の顔のわかる商品を見つけることはできなかった。 生産者の顔がわかる12月の食卓を彩る「本物のアレ」を作る!この時決意した。

 数日後、向かった先はきくち村から車で約10分、田園地帯の中にあるジャージ仔牛の放牧場「宮川ファーム」。園主の宮川さんとの出会いは約一年前。ジャージ仔牛の試食会に招待され詳しい内容も把握しないまま会場につき仔牛料理を食し、あっさりした中にも旨みを感じるやわらなか肉質に感心したのを思い出す。それ以上に衝撃を受けたのは生産者紹介の時で、私の思い込みで牛飼いということで筋肉質の厳つい男性を想像していたのだが紹介されたのは真新しいスーツに身を包んだかわいらしい女性であった。緊張した様子でジャージ仔牛を飼うことになった経緯を一生懸命に話す姿は今でも忘れない。

 今回、一緒に小さな旅をしたのは室原姉さんときくち村一番のパワフルウーマン中尾さん。放牧場に着くなり4頭の仔牛が珍しい訪問者に警戒しつつも好奇心旺盛に二人に近づいてきた。「かわいい」「草をあげてもいいですか」と仔牛と触れあう二人の姿は子供をあやす母親のようだった。ここから子を持つ女性3人の話を私は撮影しながら聞くこととなった。

 中尾さん 「どうして女性一人で仔牛を育てようと思ったのですか」
 宮川さん 「主人が農業関係の職場に勤めていて、ある日ジャージー牛の雄の仔牛は産まれて間もなく乳をださないということで殺処分されると聞きその事実に衝撃を受け、かわいそうだから私が飼いたいと素直に思ったのです。」
 室原さん「その気持ちはわかりますが、実際に仔牛を育てるという行動を起こしたことはすばらしいですね。今まで牛を育てたことはあるのですか。」
 宮川さん 「牛を育てる前まではオフィス勤務で牛を触ったこともありませんでした。新規での牛飼いに始めは不安でしたが、主人のサポートもありなんとか始めることができました。」
 室原さん 「仔牛を出荷する時はさびしい気持ちになりませんか。」
 宮川さん 「今でも出荷の時は涙がでそうになります。初めての出荷の時は自分の子供達にも非難されました。今では子供達も命をいただくことの大切さがわかり応援してくれてます。」
 中尾さん 「今度、自分の子供達もここに連れてきていいですか。きっといい経験になると思います。」
 宮川さん 「もちろんokです。仔牛達も喜ぶと思います」

 終始、かわいらしい笑顔で話してくれる宮川さんの姿は一年前に出会った時より、たくましくより優しい母性溢れる牛飼いの姿になっていた。

 「本物のアレ研究所」に戻り、出来上がってきた“本物のアレ”は「ジャージー仔牛のローストビーフ」。低温調理でじっくりローストされた肉質はあっさりやわらかで、優しい味わい。生産者の宮川さんの顔を思い浮かべ“命をいただく大切さ”を実感しながら大切に噛みしめる“本物のローストビーフ”この味を私は忘れることはできないであろう。

 「きくち村の小さな旅」は1月に続く。

文・写真

きくち村スタッフ:坂本信也
…きくち村に2013年入社。営業部所属・お米栽培

きくち村で日々てんてこ舞いになりながら働く傍ら
出勤前・休日には実家の「農園さかもと」で畑を耕す“リーマン農人”
きくち村の「畑から始まる商品作り」を実践するため日々奮闘中!

生産者の名前
きくち村スタッフ
坂本信也

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