奥さんの言葉がきっかけで始めた、自然栽培での米作り。

　「農薬をやめるか、米をやめるか。どっちか決めて。」
　平田元雄さんが自然栽培による米作りを始めたのは、奥さんの発したこの一言がきっかけでした。農薬を田んぼに撒く作業はかなりの重労働。何十kgもある機材を背負って炎天下の元、何枚もある田んぼを隅から隅まで回っての農薬散布。これを1シーズンに4、5回。年とともに年々きつくなっていくこの作業に、奥さんの限界が来たのも無理はありません。
　「嫁さんにそう言われちゃ、やめるしかないよな。」あの日決意した農薬不使用栽培でのお米作り。それから20年以上。平田さんは今も農薬を使わずに米作りを続けています。

　農薬を止めることに不安はなかったのか。そう私が聞くと平田さんはこう答えてくれました。
　「不安・・・あんまりなかったかなぁ。周りにすでに無農薬でお米作ってた人が何人もいたからね。」
　 同じ無農薬不使用栽培米を作る仲間たちに助けられながらからこそ歩んでこれた、この約20年。しかしやはり虫にやられたこともあったそうです。「今までで3回くらいかな。ウンカ（害虫）に全部やられたことがあったよ。」それでも農薬や肥料などを使おうとせず、ただ自然のままに稲を育て続ける平田さん。あの日の決意は今もゆらぐことなく、黄金の穂となって光り輝いています。